ここへ来る前は、ミャンマーってもっと殺伐とした国なのかと思っていました。
初めてこの国を知ったのは市川崑監督の「ビルマの竪琴」で、その後はアウン・サン・スーチーの軟禁と軍事政権の独裁、最近は日本人ジャーナリストの射殺事件というイメージが強くて、11年に始まる民主化以降もアジア“最後のフロンティア”といった惹句ばかりが目に付いてました。
でも実際に来てみたら、身構えた気持ちが空回りするくらいに普通の国でした。
インドのような客引きの強引さもなく、交渉に疲れ果てるようなふっかけも少なく、交通機関は順調だし、人々は礼儀正しい。
たしかにタイのようにコンビニでなんでも売っている便利さはないし、消費財の選択肢は少ないけれど、背伸びもないぶん歪みも少なく感じられます。
乞食だってほとんど見かけません。
いまいるマンダレーなんかは数百年の王政を支えた旧都なんで、住人の経済的な均質化が進んだまま、それがある程度は保たれているんじゃないでしょうか。
(これから農村部の人たちが流れ込み始めると大変かな)
軍人の姿が多いんじゃないかと思っていましたが、ほとんどどこでも見かけません。
ときおり幹線道路沿いに駐屯地がある程度で、街中に歩哨が立ってるなんてことはありません。
先入観て厄介です。
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自由市場 |
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卵をまとめ買いする女性 |
驚いちゃいけないことなんでしょうが、わりと時間にも正確です。
長距離バスはほぼ時間通りに出ますし、頼んだバイタクも約束の時間前にはホテルの玄関で待機していました。
一度だけ出先で私をピックアップするのに20分遅れたのですが、現れた彼は「ごめんごめん、ちょっと時間がかかっちゃった」と弁解してくれました。
インド人だったら、元からその時間での約束だっただろ、というかもしかしたら早く来すぎちゃったかな~、という態度ですから、すこし驚きました。
そしてミャンマーの人たちは、それなりに気配りの人たちです。
屋台に座れば、気を使って汚れたテーブルを拭いてくれますし、ヤンゴンで乗ったタクシーでは運転手が小さな音でラジオを聴いていました。
客の耳に届かない程度にです。
「音楽かけてるならボリューム上げてよ」
と私が声を挙げてようやく、ドライバー氏は横顔に笑みを浮かべながら音量を上げてくれたのです。
車内に満ちるミャンマーポップス。
しかしリズム感の悪い私は、聞き慣れない異国のリズムにすぐ乗り遅れちゃうんだけどね。
もちろんそれらは日本人が日本国内で求めるような気配りではありませんが、「あ、いま気を使ってもらった」という実感はやはり良いものです。
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昼下がりの人気の絶えた路地 |
なにもない貧しさという点では、西の隣国バングラディシュ。
なにもない素朴さという点では、東の隣国ラオス。
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バイクでミルクティーのドライブスルー |
案外にミャンマーは良い意味で普通の国でした。
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